「誰もが気軽に立ち寄れて、作りたてのビールを楽しめる」ブルワリーとして、2017年に沼津駅前に誕生したブルーパブ「Repubrew」。
その2番めの店舗「Slider House 24taps Repubrew 三島店」(以下Slider House)を三島駅すぐに出店するのと並行して、
2023年に三島市長伏に誕生したビール醸造所が「Natural Roots Studio」です。
Natural Roots Studioが三島の地に設立された、最も大きな理由は「美しい湧水があること」。
品質が高く格別に美味しい水がふんだんに利用できる三島は、その意味でもビールの醸造に最適なまちなんです。
ビールは約90%が水とも言われますが、ビールの製造には仕込み水の他にも醸造用タンクの洗浄用などを含めて想像以上に大量の水が使われます。
そのため、この施設を立ち上げる際にまず最初に手を付けたのは敷地内に井戸を掘削することでした。
深さ70mまで掘り進めた自家井から汲み上げた、三島ならではの富士山の雪解け水を仕込み水はもちろん、工場の運営全体にも活用できることとなって、「Slider House」で常時提供される24銘柄を中心とした数多くの銘柄のビールを生産する環境が出来上がったのです。
こうして2023年から、カナダ産やアメリカ産、イギリス産などの麦芽やホップを主原料として、オリジナルビールの醸造を開始しました。
Natural Roots Studioの最大の特徴は、自然環境とエコサイクルに対する自分達にできる限りの配慮を行っていることです。
醸造所の屋根には大型の太陽光発電システムが備え付けられ、ここから得られる自家電力を醸造に使用。
また醸造時の麦汁冷却の際に水との熱交換でできるお湯も全て回収して、給湯に関わる電力を削減し、エネルギー・環境に配慮したエコサイクル工場としての機能を果たしています。
さらにエコサイクルへの高い意識は原材料にも及びます。
ビールを醸造する際にはビールの搾りカスが生じます。これらは通常のブルワリーでは廃棄物として排出されるのが当然なのですが、Natural Roots Studioでは近隣の農家の皆さんに良質な肥料として提供。
地域ぐるみでの環境保持への貢献も果たしています。
ビールの醸造は大まかに言うと、原料の大麦を粉砕して仕込み釜でお湯を加えてドロドロのお粥上にしたものを撹拌・分離。
この麦汁をろ過・加熱した後に得られるピュアな麦汁だけを抽出して、発酵タンクに入れて発酵・熟成するという工程で作られています。
Natural Roots Studioは40BBLの発酵タンク6基を有し、それぞれの銘柄ごとの製造サイクルを経て、各種のビールを醸造しています。
ここから生み出されるビールは、スタンダードな味わいで人気の「本生」、柑橘系の独特の風味が強いパンチを加えた「69IPA」や「沼津ヘイジー」などの定番銘柄6種を中心に、24種以上の銘柄に及びます。
さらにNatural Roots Studioでは、醸造後にバーボンの樽で熟成させる黒ビールなどを始め、つねに新たな味わいの創出にも取り組んでいますから、また新たな「三島ならではのビール」が誕生する日も近いかもしれません。
そんな三島ならではの味わい創出の取り組みエピソードのひとつが、三島産の素材を用いたオリジナル銘柄の製造。
これは地元のJAから仕入れたキンカンと、地元の木材会社から仕入れたヒノキを副原料として、個性豊かな香りと味わいを持つ「ヒノキンカン」というビールを完成させ、お披露目したこともあったのだそう。
Natural Roots Studioは、地域の多彩な業種や人々との交流を通して、三島ならではのビールを作り味わっていただくことで、地域の幅広い方々と連携していきたいという強い願いを持っています。
そのためにNatural Roots Studioでのビール作りを見学できる「工場開放デー」などの企画を折々に実施し、地域の方を中心に広く「地元三島産のビール」を知らしめることで「わがまちのビール」としての愛着を醸しだすための取り組みを展開しています。
現在定番銘柄6種類+αの幅広いビールを商品として提供していますが、三島の特産品や独自の熟成など、つねに新しい味わいへのチャレンジを継続中。地域の方々に「わがまちのビール」をもっと知っていただき、地域と調和したブルワリーとして根付いていきたいと思っています。
Natural Roots Studio
宮脇尚登みやわき なおと
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